更地を使用の本拠として車庫証明をとることはできるか?について行政書士が調べました!

一般の個人が車庫証明をとる場合、自宅が使用の本拠となり、法人にあっては営業所が使用の本拠となります。

では、更地となっている土地を使用の本拠とし、かつ駐車場所として車庫証明をとることはできるのでしょうか?

今回は、この疑問について考えてみたいと思います。

「使用の本拠」の定義とは?

更地を使用の本拠とすることができるかどうかについて判断するには、まず「使用の本拠」の定義を確認することが重要です。

ところが、車庫証明制度の根拠となっている通称:保管場所法(自動車の保管場所の確保等に関する法律)において「使用の本拠」は定義されていません。

しかしながら、平成15年の警察庁の通達(警察庁丁規発第74号 自動車の保管場所証明等事務に係る「自動車の使用の本拠の位置」の解釈基準について 平成15年10月15日)において、使用の本拠をどのように解釈して事務処理をするのかについて次のように明示されています。

使用の本拠の解釈基準(抜粋)

自動車の使用の本拠の位置とは、原則として、自動車の保有者その他自動車の管理責任者の所在地をいい、具体的には、自動車を運行の用に供する拠点として使用し、かつ、自動車の使用の管理をするという実態を備えている場所であるか否かで判断することとなる。

言い換えると、車を使用および管理する人が継続的にいる場所かどうかということになります。これが現実社会で言うところの「自宅」であったり「営業所」にあたるわけです。

もちろん、自宅近隣の賃貸駐車場も「自動車を運行の用に供する拠点として使用し、かつ、自動車の使用の管理をするという実態を備えている場所」と言えますので、使用の本拠に含まれると判断できます。

自動車の保有者の定義

「自動車の保有者」については同通達において次のように定義されています。

自動車の保有者の定義

・自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するもの。

車検証における「使用者」にあたる者です。このほか、自動車の所有者、自動車運送事業者、レンタカー業者、リース形態の場合の自動車の賃借人等もこれに該当します。

自動車の管理責任者の定義

「自動車の管理責任者」については同通達において次のように定義されています。

自動車の管理責任者の定義

・自動車の保有者から当該自動車について一定期間継続して管理を委託され、その運行に関して責任を負う者。

例えば、自動車の保有者からその自動車を別荘で管理するよう依頼された別荘管理人がこれに該当します。

具体的な「使用の本拠」の例

ここからは、どのようなケースが具体的に使用の本拠として認められるか、警察庁の通達に例示されているものをご紹介していきます。

個人の場合
  • 住民登録がなされている住所
  • 住民登録がなされていない転居先等
  • 別荘
  • 個人事業者の事務所等
法人の場合
  • 法人登記がなされている営業所
  • 法人登記がなされていない営業所
  • 社員の個人宅等

それぞれ注意点がありますので確認していきましょう。

住民登録がなされている住所

通達では、

住民登録のみで、実際には居住している実態がなく、当該自動車の点検整備、運行管理等その使用を管理する機能を有していない場合は、当該住所地は使用の本拠の位置には該当しない。

とされています。

住民登録がなされていない転居先等

通達では、

保有者等が転居したばかりで、まだ住民登録されていない場合等、そこを生活の本拠として実際に自動車を使用しており、かつ、当該自動車の点検整備、運行管理等その使用をそこで管理している実態があるときは、使用の本拠の位置として認められることもあり得る

とされています。

別荘

通達では、

保有者等が、夏季などに長期間継続して又は頻繁に別荘で生活している場合には、当該別荘が、自動車を使用して営む生活の事実上の拠点となっており、かつ、当該自動車の点検整備、運行管理等その使用を管理する機能を有しているときは、その所在地が使用の本拠の位置として認められることもあり得る

とされています。

個人事業者の事務所等

通達では、

個人事業者の事務所や店舗は、その者の住所又は居所ではないが、業務上の活動の拠点であり、自動車もこれらの事務所等を拠点として使用され、そこで点検整備、運行管理等がされる場合がある。この場合には、そこで実際に事業が行われており、かつ、当該自動車は当該事業のために使用されていて、単に通勤等に使用されるものではないときは、これらの事務所等の所在地が使用の本拠の位置として認められることもあり得る

とされています。

法人登記がなされている営業所

通達では、

自動車の保有者が法人である場合に本店・支店として登記されている営業所は、通常、使用の本拠として認められ得るが、登記の事実のみで、実際に営業活動が行われている実態がなく、当該自動車の点検整備、運行管理等その使用を管理する機能を有していない場合は、当該営業所の所在地は、使用の本拠の位置には該当しない。

とされています。

法人登記がなされていない営業所

通達では、

法人登記がなされていない営業所であっても、そこを営業活動の拠点として実際に自動車を使用しており、かつ、当該自動車の点検整備、運行管理等その使用をそこで管理している実態があるときは、使用の本拠の位置として認められることもあり得る

とされています。

社員の個人宅等

通達では、

パソコン等の情報通信手段等を利用し、自宅や分散された単位オフィス(サテライトオフィス)等を職場として業務を行うテレワークの進展等により、法人の保有する自動車について、当該法人の社員の個人宅等を「使用の本拠の位置」とする申請等がなされることがある。この場合には、そこを業務上の活動の拠点として実際に自動車を使用しており、かつ、当該自動車の点検整備、運行管理等その使用をそこで管理している実態があるときは、当該社員が当該自動車の管理責任者として認められ、かつ、その場所が「使用の本拠の位置」として認められることもあり得る

とされています。

実務上は所在証明がないと難しい!?

車庫証明において住所地や本店所在地と使用の本拠が異なる場合、通常、所在証明といって使用の本拠に居住実態や営業実態があるかどうか証明しなければなりません。

所在証明としてよく利用されるもの。

・公共料金の明細のコピー
・商業登記簿
・消印のある郵便物のコピー

例えば、「社員の個人宅等」のようなケースは、自宅において法人の営業実態を客観的に証明することが難しいため、自宅を使用の本拠として認められるかどうか微妙なところです。

一方、亡くなった親から実家と車を相続した相続人(同居はしていない)が、相続した実家の公共料金の明細(相続人名義)を提出することで、相続した自宅に住んでいなくても実家において相続した車の車庫証明を取得したケースは実際にあります。

結論!更地は使用の本拠にはならない!

かなり遠回りしたのですが、以上の内容から、更地は自動車の保有者または管理責任者の所在地ではないですし、自動車の使用の管理する実態を備えている拠点とも言えません。(単なる駐車場所)

そもそも、更地を使用の本拠として認めてしまうと、自宅や営業所の場所に関係なくどこでも車庫証明をとれることになってしまうため、いわゆる「車庫飛ばし」の手口として悪用される恐れがあります。

よって更地は使用の本拠にはなりえないということになります。

まとめ

いかがでしょうか?使用の本拠の解釈についてご理解いただけたでしょうか?

おさらいすると「使用の本拠」の解釈基準は、

・自動車の保有者、管理責任者の所在地かどうか。
・自動車の使用の管理する実態を備えている拠点として使用しているかどうか。

一般的には自宅、営業所の所在地がこれに該当します。

判断が微妙な場合や不安がある場合は、必ず事前に警察署に確認するようにしてください。